はじめてウキ止めとシモリ玉がウキの中に入るのを見て驚きだった。もう30年以上も前の衝撃だった。
松田ウキ最大の特徴はウキ止め糸とシモリ玉がウキ内部に入り込むことにある。この構造によってウキの低重心が現実になり、ウキがブレずに確実に潮の流れになじみ、素早いウキ入れを実現する。さらに“松田スペシャル”と呼べるV字型のウキ止めも欠かせない。ウキ止めの端糸がヘッドのリングに引っかかり、半遊動仕掛けであっても固定ウキ仕掛けの感度が得られる。これで早アワセが電光石火のごとく決まるというわけだ。
松田稔さんがこれらのシステムを考案したのは約50年も前だから驚愕する。多少構造は異なるが、まさしくいま流行のアンダーロック構造の先駆けである。松田ウキの種類は多いが、上位モデルの松山(しょうざん)、松飛(しょうひ)、松遠(しょうえん)、松遊(しょうゆう)のすべてにこのシステムが搭載されている。
ぱっと見、ラインが入るウキ上部のリングの口径が大きく、正直言ってあまりカッコよくはなかった。それまで僕はウキのヘッドの上でウキ止めが止まるありきたりのものしか見たことがなかったからだ。それがなぜそうなったかという松田ウキ理論を聞くと、またも驚きだったのを思い出す。鬼才はここまで考えているのかと…。