27年前の思い出。対戦ということだったが、何も思わない余裕満々の松田さん。
恐れ多くも職権乱用で対戦
「細やんの好きなポイントに入れ」「ワシは後でエエけん」「先に釣れ」「どんな潮を見る目があるか見とったるけん」その声は優しき鬼才!
ここは愛媛県中泊の名礁ナカバエ。編集者の職権乱用? で松田さんと対戦することになった。今から27年前の磯スペ企画だった。その頃僕はトーナメントに夢中でG杯、ジャパンカップ、マスターズの地区大会に出まくっていた。そして運よく第3回グレマスターズ全国決勝大会で3位になったのだ。
それで腕試しということで怖いもの知らずにもご登場をお願いしたのであった。
名礁の引かれ潮でバラシ連発
当時のナカバエはよく釣れていた。それも下り潮が走ってそれに引かれる潮の合流点で40~45cmの尾長グレが浅いタナで絵に描いたように食ってきた。それは松田さんだけのエキサイトシーンであって、僕はといえば食わせはするがバラシの連発だった。結果は13対1でボロボロ負け。圧巻の釣果、当然至極の勝利に終わった。
「細やんは食うてくるを待ってる釣りやな」「いっちょも計算しよらんな」「釣りにゆとりがないのう」「グレに負けとんな」「マキエが下手やなあ」「上の潮ばっかり攻めてタナの潮を見とらんのう」まだまだ鋭い忠告はあったが…。
初体験のショック!手強い尾長グレ
普段は和歌山でハリをのませて獲る口太グレを相手にしている僕は、早アワセの愛媛の尾長グレは初体験だった。尾長グレはハリをのみ込まれると切られるということが僕の頭にインプットされていなかったのだ。それが敗因だろう。ショックで呆然としたのを思い出す。どちらにしてもグレ釣りは奥が深い。
「細やん勉強になったか。口太も尾長釣りもこなさな勝てんぞ。がんばりなはれ!」
その後、僕は“師匠”の釣りと人柄にのめり込んでいくのだった。それにしても、どこに強さの秘密があるのか。恐るべし!鬼才!