「よし、よし、重たい!」。道糸が45mは出ていた。ウキがスピードダウンする潮目からの一撃は本流筋のチヌ…。1997年5月から鬼才のビデオ「技あり!松田稔 悩むな!磯チヌ」の取材が敢行された。グレ釣りを取り上げた第一弾の「あっぱれ松田稔」が売れ行き好調なので第二弾の登場である。今回はタイトル通りチヌがメインターゲット。ロケは島根県隠岐にはじまり長崎県五島列島、新潟県佐渡島。初っぱなの隠岐は苦戦だったが、それ以外はまさに怒濤の入れアタリ。驚愕の釣果に恵まれた。ここでは1998年3月の長崎県五島列島の模様を再現したい。
本流は道糸の出方でアタリを読む
「道糸の出方が遅うになりよるだろ。そこでアタリがきよったんよ。食うポイントは完全に読めたのう。これから入れパクにさせるけんな。見とれよ」
ヒットゾーンにさしかかると松三郎BB—3B(ウキ)の流れるスピードはダウンし、リールから吐き出される道糸の出るスピードも落ちてくる。この道糸の出方で潮の変化をとらえているのだ。道糸の出方は左手の親指と人差し指で道糸を送り出し、リールのスプールを包み込むように道糸の抵抗を微妙に感知している。
「こら、こら、こらあ。強いやっちゃのう~。よう引きよる。本流のチヌは迫力があってよろしい。面白いぞ
45cmクラスがまたもタモへ。入れパク宣言は的中!鬼才の本流釣りスタイル。右側斜め45度方向、約45mでヒットゾーンにさしかかる。ウキ下は竿3本分ほどでガツーンとくる。道糸1.75号、ハリス1.5号2ヒロ、ロッドは1.25号の5m。基本的な組み合わせである。
マキエには配合材を入れないのが基本
「マキエに粉(配合材)は入れたらアカンぞ。食う場所が遠うなるぞ。潮が速いときは混ぜたやつと混ぜんやつと使い分けないかんのよな。食わせるために流すマキエには入れたらアカン、足元に撒く分は粉を入れたマキエでもええけど。配合材の粉は軽いだろ、なんぼでも簡単に流れていくけん、魚がそれについていきよるからや。これは何回も経験しとるから分かるんや」
マキエのオキアミは「つぶさない、混ぜない」という鬼才の基本は本流釣りでも意味があるのだ。反対に潮があまり動かないところでは混ぜたほうがいい場合もあるという。エサ取りが寄ってチヌの警戒心が薄れるからだ。
色あせない懐かしの釣りビデオ
1998年に発売された「技あり!松田稔 悩むな!磯チヌ」は、もちろん第一弾に続いてスマッシュヒットとなった。当時は釣りビデオ氾濫の時代で、全体の売り上げが下降線をたどるなかで鬼才の力はすごかった。60分もので3400円なり! 以後、鬼才のグレ&チヌビデオがタイムリーに発売されるのであった…。