磯釣りスペシャル on sight

フロロカーボンハリスの変遷と進化

城本尚史に聞く昔話から現代の技術、そして新しいVクロスについて

語り=城本尚史 撮影=細田克彦(一部:細田亮介、前川崇)

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フロロカーボンハリスの変遷と進化

しろもと・ひさし シロモッチの愛称で親しまれるグレ釣り界のトップアングラー。積み上げてきた長年の経験と発想を生かし、使いやすくおもしろいラインを世に広めるために精を出す。和歌山県南紀をホームグラウンドに、全国各地で活動。サンラインフィールドテスター、釣武者プロスタッフ。チーム・テイスト。

昔は透明感がなく、ハリスの標準直径にもバラつきがあった

 過去にいろいろなハリスを使ってきたんやけど、昔から順に話すと「トルネード」というハリスがサンラインのフロロカーボンハリスの始まりやな。四角のパッケージで売られてたやつやね。

 当時めちゃくちゃ使ってたんやけど、透明感が少なくて白っぽいハリスやった。ハリス自体の径も均一じゃなかったから結束しても強度が安定しなかったな。もう大分昔の話やけど。

 それから「トルネードハードUP」というフロロカーボンハリスが誕生して、初代のトルネードよりも透明感がよくなった。でも、ハリス自体の径の均一感がまだまだやと感じたね。細いところもあれば太いところもある感じというか。

サンラインのフロロカーボンハリスの初代となるトルネード。当時はかなり使い込んだ
次に城本さんが多用していたトルネードハードUP。トルネードに比べ、透明感は増したがまだまだ標準直径にバラつきがあったという

トルネードVハードの誕生が革命的だった

 僕がサンラインのフィールドテスターになった頃に出てたのがハードタイプの「トルネードVハード」で、これは僕の中で革命的やった。透明感も増したし、標準直径が均一になったから結束強度も向上したな。僕がめちゃくちゃ好きだったハリスやね。

 そこから次に松田稔さんが監修した「松田スペシャルブラックストリーム」が誕生した。軟らかくて粘りがあって、さらに魚から見えにくいといわれる色がついて。僕はこのブラックストリームとVハードをしばらく多用してた。

トルネードVハードのパッケージとスプールがリニューアルされたタイミングで磯釣りスペシャルの取材(2011年)に挑んだ
取材は難なく成功。和歌山県すさみで激釣させ、Vハードの強さを証明した

技術の進歩と釣り手の経験値がハリスを強くする

 時代の変化というか、糸を作る側の技術が昔に比べて上がっていった。新しくなった道糸のグレミチもハリスのブラックストリームもVハードもそうやん? プラズマライズ(サンライン独自のプラズマ加工技術)という特殊な加工も採用できるようになったんやな。

 新しくなったVハードに関しては、テストの段階から関わらせてもらったんやけど、釣行時に開発担当とこうじゃないとか、もっと張りがあったほうがいいんちゃうかとか、軟らかいほうがいいんちゃうかとか、試行錯誤を繰り返して釣り人がより使いやすいものを念頭において、新技術のプラズマライズも駆使しながら完成させた。

作り手の新たな技術とテスターの経験がラインを強くする

新たな発想を取り入れたトルネードVクロス

 ただ、新しい発想を採用したニューモデルの「トルネードVクロス」にはあえてプラズマライズはかけてないんよ。

  それはなぜか、というのは特徴を説明してから話すけど、まずVクロスの特徴をいうと、ブラウン(20cm)とアイスブルー(30cm)の2色で作られてる。ブラウンとアイスブルーといってもかなり薄い色で、ブラウン部が軟らかく、アイスブルー部が通常のフロロカーボンハリスの張りを採用してるんよな。

 そのメリットとしては、ブラウン部を軟らかく作ることで糸の特性上海中になじむのが早く、さらにソフトタイプなので食い込みがいいという理論やな。ほんのわずかなことかもしれんけど、そういった新しい発想を形として実現できたのも技術の進歩やと思う。

新たな発想を採用したトルネードVクロス。20cmのブラウン部と30cmのアイスブルー部で今まで以上に釣りの幅を広げる 

難しいハリスではなく、2色の支点を利用した特殊な使い方もできる

 これだけ聞くと難しいハリスやなと思われるかもしれんけど、いつも通りに使ってもらっていい。ただ僕の場合はオモリを多用した半遊動仕掛けを基本形にしてるんやけど、仕掛けを引っ張ったときに潮とオモリが合わないようなときもある。

 そういうときにブラウンとアイスブルーの部分が支点になってくれるので、食い込んでくれるんちゃうかなと、また違った発想ができるんよな。それが安心感に変わる。

 もうひとつのメリットは結束強度の安定感ももたせることができる。道糸とハリスの結束とか、ハリの結束が苦手な方はブラウンの部分で結んでもらうと軟らかいので結びやすい上にしっかり締まるので安定するんよな。

 さらにブラウン部のピッチが20cmあるから結びやすい。ハリ側に関してはブラウンで結ぶと軟らかい部分が支点にくるので魚の吸い込みがいいという意味合いもある。

ソフトなフロロカーボンを採用したブラウン部でハリを結ぶのが城本流。軟らかいことで結びやすい上に結束の安定性が増し、さらに魚も吸い込みやすくなる

ハリスと道糸は安定性に優れた3回ヒネリの8の字結びで直結

 僕はハリスと道糸をサルカンではなくて直結するんやけど、結束に安定してる3回ヒネリの8の字結びで直結してるんよ。なんぼいいハリスと道糸を使っても結束部が安定しなかったら糸自体の本来の力を発揮できないからね。

 コツは端糸を長めに取って、結び目になる部分を口で湿らせて本線同士、端糸同士の4本を均一に丁寧に引いて締めていく。次に本線をゆっくりと締めていくんやけど、結び方が悪いときはこのじわーっと力をかけて締めていくときに切れますわ。それで切れずに端糸が同じ側に出ていればきっちり結べたと判断すればいいな。

 それと糸の強さを生かすためには結束部のハリスと道糸の相性もある。サルカンを使う場合は別やけど、簡単にいうたら硬い糸と硬い糸、軟らかい糸と軟らかい糸は相性いいんやけど、硬い糸と軟らかい糸とかは相性が悪い。なのでそれに近い同士を組み合わせたらいいな。

 そこまで神経質にならんでもいいかもやけど、なるべく硬さが近いものを合わせたほうが強度は増すよな。1ミリでも強度が上がったほうがいいやん?

ライン本来がもつ強度を最大限に引き出すために結束は慎重におこなう
ハリスと道糸の端糸が同じ側に出ていればきっちり結べたと判断する

支点を崩さないためにあえてプラズマライズは施さない

 近年は上のタナ(浅いタナ)で釣れることが多くなったんやけど、太陽の光の加減で上にくるほど魚って見えてると思う。浮きグレとか上のタナを釣るときに、ブラウン部で結んだほうがいいときと、アイスブルー部で結んだほうが食うときが実際にあったんよな。

 2色でカモフラージュ性を高められるし、そういったいろいろなパターンを楽しめるのもVクロスのいいところやと思う。

 せっかく作った2色の支点がプラズマライズを施すと全部均一になってしまうといった理由からかけてないんよな。その利点をより生かすためやけど、もっと技術が進歩したときに支点が崩れないような特殊加工もできるようになるかもしれんな。

2色の特性をより生かすためにプラズマライズはあえて施さなかったVクロス

トルネードVクロスを使用した実釣動画はこちらをクリック

サンライン・トルネードVクロスの詳細はこちらをクリック

 

 

 

2024/03/18

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