足元まで波が迫ってくることに衝撃を受けた。もちろん荒れた日は磯に渡さないので安全は確保されているものの、和歌山県のみなべや田辺ではこれが当たり前の光景だという…。
「そろそろひとりで現場に行けるやろ? シロモッチの連載をしてみてはどうや?」
四元編集長から指令が出たのは本誌『磯釣りスペシャル』の編集会議がおこなわれた2011年1月のことだった。
それまでは先輩や編集長の取材について回り、磯釣りの一連の流れや基本的な撮影方法などを教わってきたのだが「ついにこのときが来たか」という緊張で頭がいっぱいになったことだけは今でも明確におぼえている。
翌日、シロモッチこと城本尚史さんにアポを取り、数日後の2011年2月22日に和歌山県みなべへ行くことになった。それまでに磯は10回程度上がったことがあったので釣りのイメージはバッチリだったのだが、鹿島丸が渡船をつけた磯を見た瞬間に衝撃が走った。
「え? こんなところに下りるんですか?」とシロモッチに聞いたのかどうかはもうおぼえていないが、とりあえず渡船からジャンプし、渡礁。着地した瞬間に足元がびしょ濡れになり、もうパニック状態。
「荷物はここに掛けておくんよ」とシロモッチにチャラン棒をもらい、とりあえずカメラバッグをそこへ掛けたのだが、海面が足首まであることに恐怖しかなく、頭の中は早くも帰りたいモードだった…。 「こんなん和歌山のみなべとか田辺では普通やねんで。最初は怖いかもしれんけど頑張ってよー」
田辺生まれのシロモッチはあっさり言うが、このあたりの磯釣りを知らない人が写真を見れば私と同じような衝撃が走ったはず!? とりあえず気持ちを落ち着かせ、今では化石のようなカメラ(ニコンのD200)をカメラバッグから取り出し、ときおりヒザ下まで来る波をかわしながら撮影を懸命にこなした(グレもチヌもたくさん釣れたので取材は120%オッケー)。
初めてひとりで行った撮影現場は、まさに恐怖との戦いだったが、メンタルが鍛えられた上に、今ではいい経験をさせてもらったと思っている。シロモッチ、ありがとうございました!