全遊動の釣りはウキ止めを結ばないが、狙うタナを絞っていないかといえば決してそんなことはない。いや、よく釣る人はタナを正確に見定めている。2連覇で4度目のジャパンカップ優勝を果たした友松信彦さんに、全遊動におけるタナの考え方を聞いてみた。
全遊動のタナはイメージ
全遊動仕掛けのタナっていうのは、あくまでも自分のイメージ以外の何ものでもないんですね。自分の中で「4ヒロで食った」と思っていたとしても実際は2ヒロかもしれない。でも、それでいいんです。
僕はウキを沈めていきますが、カウントダウンして何秒後に食ってくるかというのを毎投チェックしているわけですよ。サシエがなくなる秒数であったり、魚が釣れる秒数であったり。
いまどきの全遊動はロングハリスの重みでゼロウキのヘッドを押さえ込む方法がスタンダード。仕掛けだけを入れ込むのとは異なるので、厳密に言えば「スルスル釣り」ではない。まずここを理解することが第一歩
それで釣れた秒数=タナなんです。60秒で釣れるなら、60秒がタナ。それに対して自分のイメージで、経験的にたとえば4ヒロだと思って釣っているんです。
実際は2ヒロかもしれないし、それは潜って見ていないんで分からないです。でも毎投チェックして60秒で釣れたというデータがあるなら、60秒を基点にそれより落とすのか、上げるのかでタナを探っているんです。60秒でまた釣れたなら、4ヒロのタナのイメージは確定ですよね。そこをひたすら攻めるんですよ。
タナをキープするホバリング
ですからタナは、「深さ」というよりも「時間」です。時間ですけど、ラインの張りも関わってきますので、時間とラインの張り方の調整で変わってきます。
60秒で釣れたとして、そこを過ぎていってしまうと困るわけですよ。そこでラインを張ってホバリングさせるんですね。60秒のタナを、自分のイメージでは4ヒロのタナを、ずっとキープしていくんです。
それで仕掛けを回収してサシエが残っていたとします。「あれ、もっとタナが深いのか?」となれば、60秒でラインを張らずに次は70秒まで落とすんですよね。70秒で食ってきたら、さっきよりタナが深いということが分かります。4ヒロより深い4ヒロ半だな、というイメージで釣っていきます。
ラインの張りで狙い撃つ
半遊動派の人から見ると全遊動はタナがあいまいだというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはないです。毎投カウントして管理してますからね。だから横で話しかけられると僕の釣りは成立しないんですよ。数投くらいなら全然大丈夫ですが(笑)。
神経を非常に使いますし、投げて放ったらかしじゃないんで、逆に半遊動の釣りは楽だなと僕は思います。それに半遊動の釣りは何をしたらいいのか僕は分からないんですよ。
全遊動の釣りというのは、タナのカウントダウンに加えてシビアにラインの張りを調節しているんです。
半遊動の場合はオモリが仕掛けをタナまで落としてフワフワさせてくれるじゃないですか。楽ですよね。ただ、仕掛けがそのタナでなじんでしまえば、一度引き上げて打ち返すことはできますけど、それだけだと思うので、逆に半遊動でどうやったら釣果の差を出せるのかが分からないんです。半遊動のスペシャリストに言わせればそんなことはないんでしょうけど…。
全遊動はある程度は釣れるんですけど、そこから先の釣果は相当腕が必要な部分があると思うんですよ。たまたま釣れる確率は半遊動よりもおそらく高いと思います。探っていけるから。
ただ、連発させて人より多い釣果を出そうと思うと、かなりシビアな管理が必要になってきますし、そうでないと、たまたまの魚だけになってしまいます。
ウキとサシエのタナを同じに
あとウキが沈む前のタナで食ってくるような場合は、ストッパーから下の長さを詰める方法がひとつ。もうひとつはウキの浮力を落として、ウキの水深=サシエの水深、真横に近いイメージで釣ることもあります。
なぜそういうことをするのかというと、僕の中ではサシエが流れている場所と、ウキの流れている場所が近い方がより同調しやすいと思ってるんです。場所というのは層、レンジですね。
仕掛けが沈むスピードを把握することに加え、そのスピードを調節したり、狙いのタナに留めることが全遊動で釣果に差を付ける秘訣だ
ウキを浮かべると、特に海面付近は流れが違うじゃないですか。魚が食っているのが浅い1ヒロ半だったとしても、海面との流れは違うことが多いし、それで食わないことが多いのでウキは入れたいんですよ。
仕掛けを張れて管理できるなら、このような仕掛けでやりますが、ただ管理ができない軽い潮もあって、張ったら仕掛けが浮くとかマキエから外れるとかになってしまうと、ウキを浮かべてアタリを取ります。ケースバイケースですね。