磯釣りスペシャル on sight

忘れられない磯、フォトグラファーの記憶

第2回「危険を感じた、あの日」

撮影・文=細田亮介

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忘れられない磯、フォトグラファーの記憶

10年前の愛媛県中泊での恐怖体験。磯が切り立ったポイントで石が落下し、気づいた頃にはすでに海中へ…。

 気づけば10年も昔に遡る話だが、あれは2013年の12月にグレ釣りの名手である田中修司さんを撮影しているときだった。田中さんを撮影するときは、基本的にホームグラウンドである大分県南がほとんどなのだが、この日は大グレねらいがテーマということもあり、愛媛県中泊まで遠征することに。

 渡礁したのは大グレねらいのポイントとして名高い「大三角の奥」。全国の磯で数々の撮影をこなしてきたが、中泊というエリアは切り立った磯の形状が多く、あくまで個人的な感想ではあるが〝絵になる〟フィールドとして5本の指に入る。

 ちなみに私が好きなフィールドは、長崎県五島列島の白瀬灯台側、愛媛県御五神島の本島周り、五島列島上五島、高知県柏島…。その次ぐらいにランクインするのが中泊だ。

磯際だけに神経を集中させる田中さん。まさか数分後に石が落ちてくるとは誰も予想ができない

 「大三角」周辺の磯は、基本的に磯際ねらいが基本となるため、田中さんは磯際だけに集中して仕掛けを打ち返していた。一瞬のチャンスを撮り逃さないよう私も撮影に集中していたのだが、田中さんをファインダー越しに見ていると、明らかに風や波とは違った音があっという間に近づいてきたのだ。

 「ガランガランガラン、ドッボーン」  一瞬目を疑ったが、釣りに集中する田中さんの横に、頭ぐらいの大きさの石が転がり、海へと落下していったのだ。実際は20mぐらい離れていたかもしれないが、感覚的には危険を感じるほどの距離感だった。いうまでもないが、2人はかわすどころかその石が海に落ちてから気づいたのだから、もし頭上だったら…と考えると背筋が凍るほどの恐怖を感じた。

中泊の名礁「大三角」。渡礁したのは三角形が見える左側の奥。切り立った磯は特に注意が必要だ

 撮影前日が大荒れ、撮影当日も北西風が強かったため、それが原因なのかは分からないが、磯が切り立ったフィールドで撮影や釣りをするときは100%安全ではない、ということを頭の隅でもいいので置いておいていただきたい。

 これは大荒れのときだけではなく、荒れた日の前後や雨振りの日、もっといえば無風の晴れた日にも運が悪ければあり得る話なので、十分に注意しなければいけない。

 私は磯釣り、鮎釣りをメインに撮影しているが、釣りジャンルの中でこの2つは「最もエクストリーム」といつも感じている。非現実的な景色や自然を味わえる反面、今回のように危険がつきものなので、気を引き締めて撮影していきたい。

 これからは、イシダイ師だった祖父のヘルメットをつけることにしよう…

2023/01/05

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