磯釣りスペシャル on sight

シロモッチ理想の「グレ竿論」

城本尚史が語る「Bチャージ」が生まれた理由

撮影=細田亮介

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シロモッチ理想の「グレ竿論」

初めて釣り上げたグレの青い瞳に魅せられたシロモッチは、16歳で買った1本を皮切りに数多くの竿遍歴を重ねていく。「家が建つよ(笑)」と自嘲するほどグレ釣りへの投資はとどまるところを知らなかった若き日々…。タックルをプロデュースする側となった現在、夢中だった当時の経験はモノ作りに生かされ、そして新たなロッドを生み出す原動力となった。

 

理想の竿は時代で変わる

ーー城本さんの中で理想の竿というのはあるのですか?

 いや、それは常に進化してる。

ーー理想が変わっているということ?

 理想というか昔だったら、たとえば潮の流れるところだったら50~60mのところで当たるやん。ああいうときは、今の流行の胴調子の竿は向かない。

 寄せるのに時間がかかるし、道糸の伸びもものすごくあるから、先調子の竿のほうが使いやすい。近くに魚が寄って来たら弱ってるし、(糸が)切れへんし。

ーー磯際で魚の引きに耐えることがないからですね。

 そうそう。それがだんだん近場の口太グレのデカいやつは近くで釣れへんようになってきた。日振島とかああいうところはまだ前(沖)で当たるから、ある程度どんな竿でもいいと思う。僕からすれば、やで。先調子が好きなのか、それよりちょっと軟らかい調子がいいのか、胴調子がいいのか、好きなのを選んだらいいと思う。

オウガハンドの二代目、通称SCでの1尾

 ところが紀伊半島は、もともとデカいやつは際から竿1本以内が圧倒的に当たる。さらに深いタナで当たる確率がものすごく多い。すると必然的に、ガツンと来たときに先調子の竿では角度によって切れる確率がものすごく高い。

ーー耐えきれない?

 そう。道糸の距離(リールから出ている長さ)がないから、やり取りで結束部が弱りやすいから、竿は胴調子のほうがいい。でも胴調子の竿っていうのは、曲がりっぱなしでは取れない。曲がりさえすればいいならチヌ竿にすればええ、ってなるやん? それではグレは弱らない。

 近くでしかヒットせえへんところは先調子だと確実に獲りにくい。竿を立てとったら糸は切れにくいで。けど、その後に引っ張ることができん。魚に引かれた状態で耐えてるだけやから。

長さと強さの相関関係

 最初に出したオウガハンドはきつい胴調子ではないんやけど、バット部分の粘る幅が大きかったんかな。SCでは曲がるけど強く、魚が止まったときに引っ張れる竿にした。それらは5mだったけど、5.3mがほしいという声があった。

初代オウガハンドの曲がり。長崎県五島列島、黄島にて

 従来の竿ってひとつの号数に対して5mと5.3mのラインナップがあったら、5.3mのほうが長くなる分バット部分が太くなるし、少し強くなる。それなら釣武者が5.3mを出すにあたっては「いっそ調子も変えよう」と。今のSCのバットに力を付けてやることにした。

ーー具体的にはどうしたのですか?

 簡単に言えばバット部分、#4~5のカーボンシートの巻きを多くした。#5はコーティングも厚くなるから、硬くなり過ぎるのを調整したり。

 SCの5mは1.5号やけど1.5号以上の強さがある。これを5.3mにすることによって途中までの曲がりはSCと一緒なんやけど、バット部分が長くなってカーボンの巻き数を増やしたから号数の設定としては1.75号強。でもまったく違和感なく曲がる。もしかするとSCより曲がるかもしれないけど、最終的な強さは1.75号強。

 つまり「バットに強さをチャージした(蓄えた)」という意味合いで「Bチャージ」と名付けたんよ(ドヤ顔)。

ーー(笑)。強い胴調子ではない、とは聞いていましたが、そのあたりをもう少し詳しく…。

オウガハンドシリーズのプロジェクトは2014年からスタートした。ロッド担当者との打ち合わせ風景

 曲がるんやけど強い。昔から言う粘りやね。ある程度「ついていく」竿というのは糸が切れにくいんやけど、一般的にはめちゃくちゃ使いにくいはず。1.25号だったら35cmくらいのグレが抜けないこともある。竿がついていきすぎて。

 だからある程度の張りがいる。でも張りがありすぎると糸が飛びやすいから、そのへんは調整した。張りがあるけどものすごく曲がる、強く曲がる。微妙なバランスになってるし、こんな竿はほかにないんとちゃうかなぁ…。

ーーただ5.3mにしただけではなくて、すべてを見直したんですね。

 30cmの長さでいろんなことができるし、いろんなことをしたよ。

竿と道糸は共に進化する

ーー最初のプロトが上がってきたのはいつでしたか? 

 もう2年前くらいちゃうかな。

ーー結構、修正しましたか?

 やり直した。それで最終、3本の中から決めたんやけどね。1.25号のBチャージはSCの1.25号よりも、僕の感覚でいえば強くなってる。ところが1.5号はSCのほうが強いかも? という感覚。でも実際は強い。だから1.25号と1.5号でまた違う調子に仕上がってる。

Bチャージのロッドコスメは基本SCと同じ。バット部分にさりげなくロゴが追加される

ーー初代オウガハンドのコンセプトが鞭のように「曲げて獲る竿」、SCが「引っ張って獲る竿」、今回5.3mのBチャージは「もっと大きな魚を獲る竿」というコンセプトでしょうか。

 そうそう。ただ道糸と一緒に進化しない限り、なんぼええ竿を作っても意味がない。道糸と一体というか、バランスが合うような竿にはしてる。

ーー竿だけが強くてもダメなんですね。

 バット部分に1.75号の強さがあると使いにくいと思うかもしれんけど、カチッと(曲がりが)止まる部分がないから使いやすいと思う。そこで道糸が飛ばないような仕上がりにはしてるし、道糸も変えていくからね(※シロモッチプロデュースのラインを開発中)。まだ3年くらいかかるかもわからんけど、そのときにBチャージを使っても釣りやすいと思うし、そうなるとまた凄い竿が3年後に新しくできるかもしれないしね。

 

しろもと・ひさし 4+Bを中心としたウキを武器に、全国各地で竿を出す半遊動仕掛けのスペシャリスト。フィッシングチーム・テイストと名釣会に所属。サンラインフィールドテスター、釣武者プロスタッフ

釣武者・オウガハンドSC B Chargeの詳細はこちらから https://tsurimusha.jp/13439

 

2023/10/05

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